住まいの情報

二世帯住宅のすすめ

●二世帯住宅のすすめ
1920年、インドで狼に育てられた二人の少女の話が一時大きな話題になりました。
この少女達(推定一歳六ヶ月のアマラ、推定八歳のカマラ)は、発見者であるシング牧師の孤児院で育てられることになりました。
本来なら獣の餌食になるところを狼の母性本能が働いたのか、奇跡的に狼に育てられました。

しかし、この赤ちゃん達はまさしく狼の子供として育ち、保護されてからも四本足で走り、
地面に置かれた食器にじかに口をつけて飲み食いしたそうです。死んだ鳥の肉を貪り食べ、
夜になると活発に目をぎょろぎょろさせて、遠吠えします。

残念ながら発見されてからアマラが一年足らず、更にカマラは九年間ほどで亡くなってしまいました。
カマラについては九年の間に少しずつ人間性を取り戻しますが、
推定17歳で亡くなるまでに3~4歳の知能程度しか発達することができなかったようです。

これは本来人間であっても自我が発達する前に、狼に育てられてしまうと、
人間の姿をしていても、狼のようになってしまう怖い話の一例です。
環境によって本来得られるべき能力が発揮できないことをこの事例から推測できます。

つまり潜在能力は持っていても、人間が高度な人格を育むためには
それなりの環境と、年齢に応じた教育が必要ということかと思います。

赤ちゃんの頃は右脳で行動します。右脳は感覚やイメージの脳です。
成長するにしたがって親の言葉を左脳で覚え、言葉で物事を考え人間として行動するようになります。

事例のように人間性を育てる左脳が発達する時期に、狼に育てられた場合、
人間の赤ちゃんでも自分が狼であると思い込んで成長することは想像ができます。
人間は成長の過程で多くのことを身につけます。特に赤ちゃんの頃の経験は非常に大切です。

赤ちゃんの脳の成長する時期に愛情を一杯受けて育った場合と、
寂しく育った場合を比べてみると人格形成に大きな差が出るのはよくお判りいただけると思います。
大家族でにぎやかな愛情のある環境こそ赤ちゃんが成長するには最高の場所です。

人間は、更に高度な能力を必要とされる社会に住んでいます。
子供も頃、集団生活になじめない環境で生活すると、学校や社会に出てからすごいストレスを感じます。

人間社会は、年齢に応じて身についていかなければならない多くの事柄が待っています。
ごく自然にストレスを感じないで社会人として成長するために、子供の頃の環境は特に大切なのだと思われます。

何もしないでも子供がすこやかに育つ環境や、自分が高齢になった時にも
幸せに暮していけるためのひとつの考えを住宅造りの中に取り入れることができます。
家庭の中で、社会に出た時の様々なストレスに対する対応力ができていれば、戸惑うことなく対処できます。

大家族で住むことによる生活習慣が社会性や人間関係に対応できる能力を養ってくれます。

多くの負担があっても、幸福な家族を創るカギを握っているのが若奥様です。
家族の成長に合わせて社会で適応できる力を与えてくれ、
高齢者になっても安心して幸せにくらせる二世帯住宅をぜひ、若奥様に考えていただきたいと思います。

●二世帯住宅における~プライバシーの考え方~
二世帯住宅の場合、実の親子以外は赤の他人です。
実の親子である場合にはあまり遠慮はいりませんが、お嫁さんや養子さんである場合は
他人と同居すると考えて、ある程度のプライバシーも必要になってきます。
プライバシーの問題として注意しなければならないのがトイレ、洗面、浴室です。
同居型二世帯住宅の場合のトイレは一ヵ所でも生活できますが、最低二ヵ所は欲しいところです。
朝の出かけにトイレが少なくて不自由するのでは困ります。
洗面も朝、出かける前に洗髪する人がいるような場合は、複数の洗面台が必要な場合もあります。
またトイレに小型の洗面化粧台を設置することで洗面や歯磨きを済ますことも可能です。
水周りは応用がきくようにしておくと困りません。

同居型二世帯の浴室も一箇所で可能です。肝心なのは考え方で、家族仲良く暮すことを優先した場合は、
なるべく多くの家族が触れ合う機会や、会話できる場所を生活の中に考えてみるべきです。

たしかに、便利さと合理性だけを考えてしまうと、トイレや洗面や浴室の数はたくさんあるほど便利です。
しかし、社会にでてから、ある程度のストレスに対応できる能力を子供に学習させたい場合は
あえて、便利さだけを追求することは逆効果なのかもしれません。

また、人は誰でも年を取り、体が弱くてなっていきます。トイレ、洗面、浴室の床の段差をなくすことが当たり前になってきました。
高齢になっていくと、わずかな段差でつまずいて転びます。体が弱くなっても、トイレや浴室は
なるべく一人でできるように床の段差をなくすこと。廊下の幅を広く取ること。
トイレや浴室などの出入り口の幅をなるべく広くすること。
動作に合わせて、廊下、洗面、浴室、トイレには手すりをつけることで高齢者の方のプライバシーにも考慮していただきたいと思います。

●二世帯における家族円満を考える
二世帯における生活設計を始める時に、まず決めなければならないのは、
それぞれの家族がどのような生活を考えているのかを明確にしなければ間取りが決まりません。

完全二世帯で全くお互いを干渉しないで、あくまでも二件の世帯が隣にあるだけの場合を考えてみましょう。
両親が若くて夫婦二人が現役で働いている場合には、時間的すれ違いもあって、たまの休日にふれあいを持つ程度の感覚で良いと思います。

無理に同居型の二世帯住宅にして、生活リズムが違うことによって、ストレスを発生させるより干渉しないほうが円満です。
はじめは分離型の二世帯住宅にして両親が仕事を引退したときに、お互いの住宅を行ったり来たりできるように、
入り口を作ったり、間仕切壁を撤去して単独型に近い二世帯住宅に改装することもできます。

はじめから単独型の二世帯住宅を考える場合は、お互いの生活時間を明確にして、少しでも負担が軽くなる配慮が必要です。
夜勤のご主人がいる場合や、夜遅くなる仕事の場合は、台所や浴室、トイレの水の音が深夜に良く響いています。
水道管や配水管はつながっていますので、夜間周りが静かになってからの音は思った以上に気になります。

くれぐれも寝室近くには水道管が配置されない間取りを考えたいと思います。家族円満のためには、
設計の段階から細やかな気配りが必要です。特に視覚的にストレスが発生しないか。
音の問題は大丈夫か。タバコや臭いの問題はないかよく考えてみたいものです。
住宅は家族が明るく楽しく過ごす場所です。家族の絆を深めるために何か考え、形にしたいのかはっきりわかるような家にできたらよいと思います。

●二世帯住宅における節約する方法
二世帯住宅を購入する場合に限って、もったいないと思うのは、二世帯住宅がうまくいかなくて、
一緒に住まなくなることや、転勤などで大きな住宅に住む人が少なくなってしまうことです。

二世帯住宅でお互いの関係が気まずくなって家庭不和になったのでは泣くに泣けません。
そんな不幸を回避するには、お互いがどんな生活がしたいのか、どんなことをしたくないのか
はっきりした上で、家族全員が納得できる形を見つけることです。

希望が多くて多少コストアップになっても、不満を持って破綻を迎えるよりは比べ物にならないほど経済的です。
単独世帯の住宅と違って住む人が多いのですから、多くの考えが出ます。
そこでしっかり納得できるまで話し合いましょう。妥協や我慢を前提にすることはお勧めできません。

さらに住宅は家族の変化によって将来の形も変わります。5年後や、10年後、15年後のことを考えた計画も将来の出費を控えます。
今後、家そのものの寿命も大幅に伸びています。建て替えなくても、臨機応変に対応できる綿密な計画を持って望みたいと思います。
将来単独世代になったときには、開いている部分を完全に独立させて賃貸する方法もあります。

●ストレスをためない二世帯住宅づくり
二世帯住宅を考えた場合、両親の期待は孫とのふれあいが増える事。病気や何か起きたときに
面倒をみてもらえる事。留守の時に家を頼めることなどがあります。

若夫婦の期待と言えば、子供の世話をみてもらえる事。生活費の負担が軽くなる事。
奥さんが働きに行っても、家事を手伝ってもらえる。このようにはじめから、双方の考えが異なっています。

そのため、期待していたことが思うように行かず双方の不満がつのります。
はじめから考えが違いますからうまくいかなくて当たり前なのです。休日の過ごし方や親戚友人との付き合いも違います。

うまくいかない前提に立ってお互いの生活を設計すれば問題が少なくなります。
自分たちのエゴをよく理解するとともに相手の期待も知って、自分たちの期待は最小限にすることが肝心です。

●姑さんと若奥さんが仲良しになる家造り
昔、学生時代に夫婦の味の話を聞きました。
20代の夫婦の味は、こってりした中華料理の味。
30代の夫婦の味は、ボリュームのある西洋料理の味。
40代の夫婦の味は、日本料理の味。
50代の夫婦の味は水の味。
60代の夫婦の味は無くては生きていけない空気の味だそうです。
ちなみにその時教授は60代で奥さんがいなかったら生きていけないと言っておられました。

夫婦の状態を「味」で言ったものですが、年齢に応じて好みも食事の内容が違うことにも理解しておかなければなりません。
一般に若夫婦はこってりした中華や西洋料理が好みです。両親は和食を好む傾向です。
食事の時間や片付け、起床時間や睡眠につく時間もまるっきり違います。
選択時間や子育てに対する考え方もまるで違いますから、若奥さん姑さんが良い関係を築くには
初めからきちっとした分担や約束が大切です。
お互いの求めるものが違うわけですから、そこを理解して生活しなければ、良い関係ができません。

●家族が伸びやかに心身とも健康に暮らすための家づくり
二世帯住宅には大きく分けて4タイプがあります。

■完全分離型
玄関・水回り設備とも2ヵ所ずつ設けて、生活空間を全て完全に分離したタイプ。
左右型 Aそれぞれの世帯共に1・2階を使った間取りをくっつけて連続にする方法があります。
もちろんそれぞれに階段もあります。
生活時間帯が世帯によって違う場合はこちらの方タイプが良いですが、
階段がある為に将来親世帯が2階を使用しなくなる可能性もあります。
外階段を作り、例えば1階を親世帯、2階を子世帯というように上下に住み分けタイプです。
生活時 間帯がほぼ同じであれば問題ありませんが、場合によって物音に対しての配慮が大切です。

■部分共用型
水回り設備(トイレ・浴室・キッチンなど)を共有する、
もしくは水回り設備は分離してリビングを共有するなど生活空間の一部を共有するタイプ。

■完全共用型(同居タイプ)
玄関を一つにして、寝室や個室以外のスペースを全て共用するタイプです。
水周りのトイレや洗面、浴室、キッチンが一つの場合もあれば複数設置する場合もあります。
このうちのどのタイプの二世帯住宅にするかは、それぞれの考え方によっても異なりますし、
息子夫婦と同居なのか娘夫婦と同居なのかによっても選択方法は変わります。
娘夫婦と同居の場合はキッチンが一つであっても実の親子関係なので問題が少なくなります。
息子夫婦と同居の場合は、キッチンを分けて考えないと姑とお嫁さんの間がしっくりいかなくなります。
しかしながらそれぞれの食事の時間が違えば一つのキッチンで事足りる場合もあります。
日本の住宅が時代の流れの中で大家族制から核家族になる傾向があります。
基本的に二世帯住宅を考える基本は触れ合う機会、時間をどのようにしたいか、
プライバシーをどのように保ちたいかのバランスを良く考えることです。子育てになるべく効果的であること。
お互いがスープの冷めない距離で楽しく暮せる家づくりを実現するのもよい方法です。

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