設計スタッフの徒然話

大地震から家族を守る耐震住宅を建てるために


 

4月は新しい生活をスタートされた方も多いかと思いますが、

私は木造住宅の構造を勉強する為に通っている構造塾の3年目がスタートしました♪

 

昨年より参加者も随分増えて会場の雰囲気にも活気があり、自分も新たな気持ちで心機一転取り組もうと決意した次第です。

学生時代や一級建築士資格取得のため勉強をしている時は、構造は苦手な分野でもあったのですが、

木造の注文住宅では自由設計という言葉が象徴するように、

プランの自由度と構造的整合性の検討が見た目だけではわかりにくく、

設計者の知識レベル向上とともに避けて通れない部分でもあります。

そのような中で、安心・安全の住まいを実現したい思って現在まで取り組んできましたが、

構造の基礎知識から再度学び直し、その根拠をより深く理解し、

もっと改善できることはないのか知りたくなったからです。

ご存じのとおり木造軸組工法は日本の気候風土の中で育まれたもので長い歴史があります。

関東と関西など地域によっては少しづつ違いがあったりもします。

建物が上棟し骨組みが出来上がった姿も多く目にしてきましたが、骨太の構造はいかにも頑丈そうという印象もあり、

理論的根拠がうんぬんというより、長く培われてきた知恵や経験値の結晶というイメージもあります。

高い技術力に裏打ちされた実績が多いだけに、

逆に慣例上こういうものとか・・・教わったとおりに造るという話しも耳にすることがあり、

はたしてどれが一番良いのか?その根拠はどこにあるのか?と考えさせられる場合もあったりします。

構造塾が2年目に入った時期に熊本大地震が発生しました。

私も住宅供給者の立場として視察に赴き、その後、発表された木造住宅への被害状況や結果を見るにつれて、

自分の建てている住宅の耐震性能について根拠を明確に、

そしてもっと改善できることはないのかと想いがさらに強くなりました。

以前は勉強させられてる感もあり、しんどいだけでしたが、やはり学びたいという気持ちは大切ですね♪

随分と理解度に違いが出ているのを感じます。講義は2つのカテゴリーに分かれます。

1つは木造住宅の構造について、そしてもうひとつは地盤強度や基礎構造のことです。

どちらもボリュームたっぷりですが、講師の先生がわかり易く解説をしていただいています。

先にも書きましたが、自由設計ができる注文住宅では設計者の構造計画に対するスキルが大切ですが、

実は考え方を含め、結構まちまちだったりすることをご存じでしょうか?

建築基準法で定められたものは、わかりやすくいうと最低限の基準であることは以前にもお伝えしました。

しかし研修で聞いた話では、建築基準法をクリアしているのだから大丈夫との担当者の安易な考え方や、

さらには4号建築物という小規模建築では設計者責任において構造的な安全性検討済みという前提で

確認申請の際に提出義務がないことを誤解し、

検討せずに建築している業者もあるのだと指摘されていました。

もちろんしっかり検討されている建築士の方がほとんどかと思いますが、

そんな安易な誤解から完成した住宅に大きな差が発生してしているとすればこんな残念な結果はありません。

このように見た目にはわかりにくくても、大きな差が発生しかねないのが構造計画なのです。

私もありがちだなと感じることは、担当者が施主様のご希望を満足させようと一生懸命考えている最中、

意識しないうちに構造的に不利な設計に陥ってしまっていることもあるのではないかということです。

私共では、耐震等級3を基準としたものをはじめ直下率など、具体的な設計基準を設け、下回らないことをルールとしています。

ですからこの設計では承認できないということも起こり得ます。

担当者によって考え方に差異がある以上、多少設計に手間がかかろうと、

自社としての基準を明確にすることが注文住宅に一定の耐震性を確保するために欠かせないと考えています。

専門的な話しにはなってしまいますが、地震の力ができるだけ地面まで素直に伝わるような、

構造的に整理された建物は耐震性能がより効果を発揮します。

直下率などは基準法に規定のないものですが、耐震性を向上させる有効な手段と考え採用しています。

直下率の有効性に関しては構造専門の先生方でも見解は様々ですが、

比較的築年数の浅い建物が倒壊した原因は直下率が悪かったからだとする見解や、

東京都市大学の教授による熊本地震の報告会でも、直下率の高低だけで建物の耐震性能を語ることはできないが、

構造的な視点からすると、この直下率を気にせず設計をしているのは

構造に感心がない設計者と言えるのではないか・・・とのお話しもありました。

耐震住宅を検討する時、建物全体の数値上の整合性のみではなく、

実際の建物の耐震性能はこうした細かな検討でも差がでるのではないでしょうか。

特殊で高額な技術や製品に頼らずとも、設計者の心掛けで維持できる耐震性があることをぜひご理解いただけると幸いです。

工場で作られるハウスメーカーさんの量産住宅はと比べ、1棟づつ自由設計ができる注文住宅では、

その耐震性能が設計者スキルにゆだねられているので明確な基準を設けているかというのは非常に大切な観点かと思います。

大地震という自然の力は人間の知恵を超えるほど大きなものではありますが、

住宅の倒壊からご家族の命を守るという観点だけでなく、

大震災後も安心して住み続けられる木造注文住宅を目指して、3年目の研修にてしっかり学びながら取り組んでいきたいと思います。

 
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