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無暖房住宅から考える断熱性能

 

信州大学教授の山下恭弘先生による「長野県内で無暖房・省エネルギー住宅は達成できるのか」
というご講演を2007年に拝聴させていただいたことがあります。

無暖房住宅とは、文字通り、断熱・気密性能を十分に高めることで、
照明や家電、さらに人体などから発生する内部発熱・排熱を効果的に利用し、

さらには太陽光発電を利用しながら、特別な暖房機器を限りなくゼロに近づけて、
室内の温度を安定した状態に保つことのできる住宅のことを指すとのことです。

暖房機器を限りなくゼロに近づけるということで、
完全な無暖房ということではないとも言えますが・・・

冷暖房器具なしで生活できる室内環境なんて可能なのか?しかも長野県で・・・
と普通に思う人も多いのではないかと思いますが、実際に実現は可能とのことでした。

当時は無暖房という表現に強い興味を感じるのみでしたが、
年月が過ぎてみれば、日本の建築における断熱性能はたいへん低く
近年ではゼロエネルギー住宅(ZET)など
省エネ性能が強く求められるようになりました。
HEAT20のG2やG3など
断熱性能の等級のことが当たり前に語られるようになり、
印象も当時とは随分違って聞こえます。

ご講演の中では、無暖房住宅の室内環境を快適に感じるか?などの印象は、
人によって感じ方がまちまちなので、
場合によっては最低限の冷暖房設備は必要とのことでしたから
やっぱりある意味理想に近いのかなとの印象もありましたが

長野県の信州大学では、当時から実際に実験棟を作って研究しているということで、
冬の寒さ厳しいエリアの特性ということもあるのかもしれませんが・・・
地球環境を守るという観点から考えれば、究極の省エネ住宅としての取組だったのだと
改めて深く感じるものがあります。

その時のお話では厚さ400ミリ以上もある厚い断熱材に囲まれた約11㎡の実験住宅で、
長野県信州の冬場の寒さの中でも、断熱材の性能が効果を発揮し
家電などの発熱で十分安定した暖かさを実現できたとの報告でした。

さらに、高気密高断熱住宅で以前より一般的に言われている夏の焼き込みについても
排熱換気をしっかり行うことにより抑えることができたとのことです。

あくまで実験棟でのお話しなので、実際の住宅で人間がその中で生活をした場合
どのような結果になるのかは推測するしかありませんでしたが
このような研究開発の継続が大切なのだとの印象もったことを記憶しています。

聞くところによると日本の住宅の断熱性能は
海外の住宅と比較にならないくらい低いものだそうです。

その後、実際の住宅での実例が実現しているとの話も目にすることができ、
現在では、無暖房住宅とまではいかなくても、ゼロエネルギー住宅などのように
省エネ性能の高い住宅が一般的に強く求められる状況になっていますし
国を挙げて様々な施策が、今後もなされていくのではないでしょうか。

いずれにしても、SDGS持続可能な開発目標などに代表されるように、
地球環境の悪化を防止し、光熱費高騰などの社会問題なども見据え、

エネルギー消費量の少なくても快適な室内環境を実現できる住宅を目指すことは、
私たち住宅を造る者の責務であり

断熱材料等や空調機器の性能向上を始め、断熱性能が上がることによっておこる
建物への影響なども含め、まさに取り組んでいる最中ですので、
今後も発信をしてまいりたいと思います。

 

 

 

 

 

 

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